次のSociety(社会)に、世界平和に貢献できるカオハガンを創りたい

次のSociety(社会)に、世界平和に貢献できるカオハガンを創りたい

    私は、ここ約30年を、カオハガンのほとんど手付かずの自然の中で、ゆったりと、しあわせを感じて暮らしている。
 しかし、世界全体としては、高度な工業化、情報化をバックにした、経済最優先の歩みの結果、人類は、今、人工知能やロボット技術の急速な発達により、新たな社会に突入しようとしているようだ。その、「Society 5」に関しての討論会が行われ、新聞に掲載されていた。

 我々人類、ホモ・サピエンスが東アフリカで誕生したのが、約20万年前だった。それから、私たちは四つの社会(Society)を経て生存を続けてきた。その最初の Society 1 が「狩猟社会」だ。その次が、約1万数千年前に始まった Society 2 の「農耕社会」。その次が、ほんの数百年前に始まった Society 3 の「工業社会」。そして、数十年前にスタートした Society 4 「情報社会」といった過程を踏んで、私たち人類は生きてきたそうだ。
 そして私たちは、今、近い将来に、新しい段階 Society 5 に、急速に突入しようとしている段階にある。それは、人工知能やロボットが、高度な革新的な技術により、経済発展と社会的課題の解決を両立させる「人間中心の社会」だそうだ。しかし、様々な社会課題が解決されると期待される一方、不安も根強いのだ。

 討論会のパネル・ディスカッションには、数人の方が参加されたが、そのうちのお二人はもう既に、この Society 5 に期待されるような起業をされている方だ。一人は、自分の会社で働いている優秀な人材の背中を押し、独立起業を支援している。リストラの逆で、良い人から順番に起業のチケットを与える。そして、その人たちと緩やかに連帯することで、事業の機会が格段と拡大しているそうだ。もう一人は、石炭、石油、原子力による発電には限界があることを実感して、太陽光発電などを中心に個人が発電をし、電力を個人間で売買するプラット・フォームの構築を考えているそうだ。なかなか、面白い構想だ。

 近年の経済最優先の動きの中で、自然素材の破壊が進み、また、収入の格差が大きくなっているなど、現実がかなり、激しくなっている。上記のすばらしい仕事を始めておられる方々は、ハーバード大学などで学ばれた、優秀な方たちだ。そのような方たちにとっては、可能性を感じられる時代になるのかもしれない。しかし、中流、貧困層の人たちにとっては、かなり厳しさを増した時代になってくるのではないだろうか。

 そういう Society 5 の時代に急速に向かっている今、私たちはカオハガンでのコミュニティ創りをどう進めて行ったら良いのだろうか。
 私は、カオハガン島で30年間を暮らした経験の中で、「カオハガンの暮らし、文化」を次のように確信している。
 カオハガンは、ほとんど手付かずのような大きな自然に包まれていて、島民たちは、そこからいろいろな恵みをいただいている。魚や貝、雨水、太陽の光、爽やかな風、食べたり、治療に効く草木、などなどだ。島民たちはそんな恵みに感謝をし、だからだろうか、それを皆で分け合い、シェアーしている。もちろん家族で、魚や貝を採りに行くが、行けなかった人や、お年寄りには分けてあげる。だから、皆が、信じあって、協力し合って生きている。
 カオハガンで手に入らないお米などは、近くのボホール島で毎週開かれている、交換の市に、採った魚や貝を運んで、交換して手に入れている。現金はまったく使われていなかったが、皆が、ほんとうに、しあわせを感じて暮らしていた。

 私は、このような、狩猟、交換の暮らしを出来るだけ残していって、島民たちに、ずっと、誇りを持って、幸せに暮らしていって欲しいのだ。
 それを発信し、世界からたくさんの人々が訪ねてきてくれる、そして、癒され、幸せを感じてくれる。そんな、場所を創りたい。そして、世界の平和に貢献したい。

 もちろん、島民たちがほんとうに必要としているニーズは、取り入れてゆく。良い意味での、医療、教育などだ。
 そんな中から、数人の島民が、ハーバード大学などで学んで、Society 5か、6の、カオハガンのコミュニティを考え、創ってくれたらなあと、夢見ている。

     2020年 正月

      崎山 克彦