2019年9月、カオハガン島に初の医学生が誕生しました。
彼女の名前はアルシェル・グディア。
9人の子供に恵まれたアドルとノベ夫妻の長女です。
カオハガンハウスは、設立当初から島民の保健衛生状況を改善するためのさまざまな取り組みをしてきました。
保健・医療では、島のヘルスセンターの運営支援として、支援スタッフの増員、島民の治療にかかる医療費の負担(9割)、公的保険サービスへの加入支援、日本や地元の団体による医療ボランティアの受入れと住民向け保健啓発活動を行いました。
また、島の長期的かつ自立的な課題解決のため、島の医療を担う人材の養成も進めています。具体的には、カオハガン島出身の医療人材(看護師、医師)を育て、島の保健医療を長期的に支える仕組みづくりをします。
2021年現在、島には看護師の国家資格をもつ島民が2人います。
そのうちの1人が、以下に述べるアルシェルです。
アルシェルは、2011年にカオハガンハウスの保健計画の下で医師を目指す奨学生として選ばれました。そして、同年7月にセブから飛行機で30分ほど離れた島、レイテ島にある国立フィリピン大学に入学しました。
この大学は離島や過疎地で活躍する保健医療人材の育成に力をいれており、学生の9割がへき地からの出身者です。
国内外でも有名な「階段式カリキュラム」という制度があり、学生は助産師→看護師→医師の順序で学業を進めていきます。
学生は各課程を終えるごとに国家試験を受験し、国家資格を取得することが次の課程に進む条件になっており、途中課程からの編入はできません。
この制度により、この大学の医学部を卒業する学生は助産師、看護師、そして医師の3つの国家資格を持つ、いわば地域医療のスペシャリストとなります。
アルシェルは、この大学の助産師、看護師の課程を修了し、それぞれの国家資格を取得しています。
その後、医大進学に必要なセンター試験で良い結果がだせず、2年間ほどは看護師として働きながらのつらい浪人生活を送りました。
しかし、彼女のひたむきな努力が実り、2020年のセンター試験で素晴らしい結果を出すことができました。
同年9月、ついにフィリピン大学医学部に進学することができたのです。
ところで、この大学の出願書類の一つである推薦状には、市長や村長のほか、居住する村(バランガイ)の住民8割からの直筆サインが必要でした。
アルシェルは、カオハガンハウスと島民の期待を小さいからだ一杯に背負い、たくさんのプレッシャーの中で浪人生活を含む10年間、努力をしてきました。
そして医学生となり、ますます現実味を帯びてきた「医師となり島へ貢献する」目標に向かって、今なお、ひたむきに頑張っています。
島の小学校を卒業した子供が医師になる。
アルシェルが成し遂げようとしていることは、島の健康問題への貢献だけでなく、島の子供たちに自分たちの持つ将来の無限の可能性と夢に向かって努力することの大切さを教えてくれるものだと信じています。
カオハガンハウスは、そんな彼女を引き続き支援していきたいと考えています。
カオハガンハウスはこれまで、以前活動していたNGO「南の島から」へのご支援金から奨学金制度を運営してきました。
「南の島から」を数年前に閉じてからは、カオハガンハウスの収益で奨学生を支えてきました。
カオハガンハウスが昨年3月に閉鎖になってからは、皆様からいただいたご支援金、そして、カオハガン島のオンラインコミュニティの参加費で奨学金を賄っております。
島の未来のための取り組みをこの期間にも続けることができるのは、ひとえに皆様の温かいサポートがあるおかげです。
本当にありがとうございます。
月々¥1,000から奨学金制度をはじめとした島のサポートができて、島の豊かさも受け取れるオンラインコミュニティにつきましては、下記のページで詳しくご説明させていただいております。是非ご覧くださいませ。https://community.camp-fire.jp/projects/view/338306