
基本となった考え方
28年間、私は、国際出版という場で、世界中を歩き、忙しく働いて参りました。
1987年、フィリピン共和国にある小島と出会い、その海洋の自然のうつくしさ、そこに住んでいる350人の島民の素朴さ、明るさ、そして、その「何もないけれども、なぜか豊かさを感じさせる」暮らしぶりに感銘を受けたのです。
しかし、その島「カオハガン島」にも、外部からの「開発、発展(development)」の波が押し寄せはじめていました。究極の「目的」は多分、同じなのですが、その「過程」での多様性を認めることのない、経済を中心とした、グローバルな発展の波です。
「この島を、『この島に適した過程を踏んで』発展をさせたい。」、そして、そのなかで「ほんとうの発展の目的であるはずの、真の人間の『しあわせ』を考えてみたい」。その思いがこのプロジェクトのはじまりです。
「自然環境」だけではなく、信頼や、互恵性に基づいた、ネットワークを重視する「社会関係環境」までを含めた環境を、次世代に引き継ぐ「持続可能」なものにすることが必要だと考えました。そして、その発展は、地域の人たちの意思に基づいたものであり、その人たちが中心にならなければならない。さらに、人々の基本的な二一ズを満たし、エコロジカルにも健全であり、かつ、経済社会の構造変化に柔軟に対応し自らを変えていけるようなものでなくてはならないと考えたのです。
南の小島という、豊かな自然と肌を接した、大宇宙の一点であるような場所で、以上を考え、実行に移したのが、この「『持続可能な島』プロジェクト(The Sustainable
Island Project)」なのです。
「持続可能な島」プロジェクト The Sustainable Island Project
カオハガン島は、フィリピン共和国の中央部、セプ島とボホール島の中間にあるオランゴ環礁の縁にのった、面積約5万平米、珊瑚礁に囲まれた熱帯の島です。
風、潮の満干(みちひ)、太陽や月や星の動き、雨、植物の成長、緑、自然のリズムが日常的に直接肌に感じられる環境です。そこに約350人の住民が暮らしていました。いちばん近い、比較的大きなマクタン島まで小船で約一時間半、付近に点在する10数個の島々を交流の範囲とする人々です。豊かな海洋の自然に包まれ、その自然に寄り添ってほぼ自給自足の暮らしをし、そして、足りないものは、付近の島々で交換をして得るという暮らしをしていたのです。
そんな島に、マクタン島の海岸にあるリゾートホテルの客たちが「アイランド・ホッピング(日中、近くの島々をボートで訪ね、昼食を食べたり、海水浴をしたりして過ごす」に訪れ始め、そこで、島民たちがお土産品を売り、昼食をつくり、お金を受けとるという暮らしが始まっていました。
また、マクタン島の漁師たちが収穫高を上げるためダイナマイトを海に投げ込む漁法を始めて珊瑚礁の破壊が進んでいる時期でもありました。マクタン島のリゾートに白浜の海岸をつくるため、カオハガン島から大量の白砂が持ち去られました。
そして、数年後には、カオハガン島を管轄するマクタン島、ラプラプ市の市長選挙の候補者から発電機が贈られ、島に電気が灯もりました。テレビが島民の暮らしに入ってきたのです。
ちょうどそんな時に、つまり、金銭や情報が日常の暮らしに入り始め、人々の欲望が少しずつ膨らみ始めた時期に、私はカオハガン島と関わり始めたのです。
そのような自然と共にある島民の暮らしに憧れを抱きながら、同時に、私たちが体験してきた日本やアメリカと同じ暮らしを、「数十年遅れて、島民たちが追いかけるだけでいいのか」を考えたのです。
この島を、未来に向かって「持続可能な発展をする島」とするために関わってみよう。そして、それは、まだまだ世界に多く残っている同じような状態にある地域への大きな参考になるはずだ。そして、同時に、私たちが探ろうとしている21世紀の「あるべき、良い暮らし」の指針にもなるはずだと考えたのです。
具体的には、次のようなことを重要と考え、活動を続けてまいりました。
私たちが行ってきたプロジェクトの内容
1.まず、島民の意思であること。島民との強い信頼関係を築くこと。
2.島に暮らす人たちの「基本的な必要(二一ズ)」を満たす。
3.経済社会の構造の変化に柔軟に対応するため、地元に立脚した、ユニークな収入源をつくる
4.豊かな自然環境を保護する。
5.「社会関係環境」を守る。
6.「すでに発展を遂げた国」に住む私たち自身の暮らしを見つめ直し、考えるために、
これから重要と考えている活動。
>> 『持続可能な島』プロジェクトについてもっと詳しくお知りになりたい方は、
ぜひ、全文をPDFでお読みください。


