アルベルトの誕生日に皆で酒を飲み、楽しかった

アルベルトの誕生日に皆で酒を飲み、楽しかった

夕方の3時ころから、カオハガン島の南の沖につくっている、「熱帯珊瑚礁保護区」のスタッフを集めて会議をしていた。終わりころになって、責任者のアルベルトが「今日は私の誕生日だ。家の前でパーティをするから来ないか」と言ってくれた。
4時ころ会議が終わったので、会議の後始末をしてから、北側の海岸沿いにあるアルベルトの家に行ってみた。家の横の、緑が覆い、そのさらに上に火炎樹の真っ赤な花がちらちらと見える、そして目の前がすぐに砂浜の、自然に囲まれた空間に、すでに20人くらいの若者たちが椅子を持ち出して集まっている。すでにラムとコーラの大瓶が数本地面においてあって、「ラム・コーク」を飲み始めている。こういう島民の集まりで飲む酒は、ラム・コークに決まっている。
私は、300ペソを持っていって、そっとアルベルトに手渡した。島民たちのお店で買うと、二本がセットで270ペソ(700円くらい)。それをコップに半々に注いで飲むのだ。コップは一つか二つしかなく、それを皆で回し飲みをする。回ってきたら、一気に飲み干さなければならない。 島民の数は600人強だから、毎日平均二人が誕生日になる。夕方島を回ればどこかで誕生日のパーティをやっている計算だ。誰が参加しても平気だから、飲みたければ、毎日飲んでいられることになる。

アルベルトは今日で50歳になるのだそうだ。ほんとうにおめでとう。私が、島に来た25年前に、当時村長だったアマドから、「私がいちばん信頼している若者は、アルベルトだ」と言われた。それから私はずっと彼を信頼し続けているが、それに値する男なのだ。
太ったディミーがギターを持ってきて、弾きながら歌い始めた。まずは「ハッピー・バースディー」を皆で何回も歌う。それからはギターを回しながら、何人かの若者たちがひっきりなしにビサヤの歌を歌ってくれる。リズムの乗りながら、回ってくるラム・コークを飲みながら話が弾み、楽しさが増してくる。サルポといって、浅い海の砂に潜っている太ったミミズのような動物を煮たものが運ばれてくる。これが、酒のつまみにはもう最高なのだ。
酒が少し足りなくなっているようだ。私は立ち上がって近くの島民のお店に酒を買いにいった。お金を持っていないので、「つけ」で買う。これもごく自然のことなのだ。ちょうど島の若者と結婚している嘉恵さんと夫のジャンドレーがやって来て、今からパーティに参加するので酒を買いにきたと言って酒をまた注文した。酒を2セット抱え、また戻る。もう50人くらいに増えているかな。みながわいわいと、話が弾んでいる。麺類を煮た料理が出てくる。これも酒の席には必ず出る料理である。

暗くなってきたので、アルベルトが家の中から電線の先につけた電灯を持ってきた。それを頭上を覆っている木の枝にかける、家の中でスイッチを入れたのか、明かりがついた。明かりの周りの緑がとても美しく目に入る。自然の中にいる自分を感じて、しあわせだ。
気がついてみたら、女性が一人もいないのだ。いるのは嘉恵さんと、少しあとから来たこれも島民と結婚している佑子さんの二人だけなのだ。奥さんや娘さんが時々出てくるが、参加をすることはしない。だんな、お父さんの酔っ払って、楽しんでいるのを見ているのだそうだ。
私には、特別にグラスがひとつ与えられているので、ゆっくりとラム・コークを飲んでいるが、それでも少なくなると皆がすぐについでくれるので、もう10杯以上は飲んだだろうか。
アルベルトが隣に座ってくれて、「ありがとう、とてもうれしい」と話しかけてきた。私もとてもうれしい。前に座っている、セビオも今年50歳になるのだそうだ。セビオの娘は私たちで出した奨学金で、昨年看護婦の資格を採り、今セブのチョンワという大きな病院で働いている。とても良い家族なのだ。
今30台後半から上の人たちは、小学校の教育も受けていない。しかし、カオハガンで生きる暮らしの技術をしっかりと身につけ、毎日の暮らしをしっかりと生きてきた男たちだ。モラルもしっかりとしている。この世代は、ほんとうに信頼が置けるのだ。
アルベルトの家の右隣は、元のクラフト・ハウス。そのアルベルト側の壁には壁画が描いてある。前に、長くカオハガンにいてアート活動をしてくれていた、香織ちゃんが描いてくれた壁画なのだ。それが木々の緑を通して、明かりでくっきりと見えている。カオハガンの暮らしを描いた素朴な絵が、とてもすばらしい。香織さんは、今、海外青年協力隊でインドネシアで活躍している。来年の7月にはそれを終えて、またカオハガンに戻ってきてくれる。香織ちゃんはどうしているのかなあ。考えるとますます良い気持ちになってくる。
ほんとうに夢見心地になって家に帰って寝た。まだ9時だった。島民との親しさをより身近に感じて、ほんとうに楽しい夕べだった。

2016年7月9日
崎山 克彦

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1.  サルボをつまみにラム・コークを吞んでみたいです(^o^)。
    先日、ラジオ深夜便で貴方の声を聞きました。
    島の電力は夜だけ(供給する)と言うことが記憶に残っています。

     私は78才年金生活者です。半分趣味的に、自家発電研究をしています。
    構成は、太陽光発電パネルと蓄電池、それに手作りコントローラーです。
    売電はせず、発電した電力はすべて自家消費しています。足りない電力
    50%は買電です。目標は、100%自家発電です。
    7/26 神奈川県 山本侃良(あきら)

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